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大竹文音さん (8k10xl00)2022/12/8 23:49 (No.631886)削除
『親子』という関係性ーー押川剛『「子供を殺してください」という親たち』(新潮文庫、2015年)

精神障害者移送サービスを営む著者によるノンフィクション。20年以上続けてきた人だけに紹介される具体例が重い。障害者移送って何?ぐらいの知識しかなかったが、なかなかに衝撃的な内容だった。当事者本人より両親に問題があるケースも多いのだと、著者は指摘している。いまの世の中は、心の病気になりやすい。ありとあらゆる情報がネットで手に入るようになり、精神科医の中にも、安易に向精神薬を処方する人も増えている。2013年の改正精神保健福祉法によって、障害者を親が支える方向から社会や地域で受け入れていく方向に変わったが、現実には病院は儲からないので3カ月で退院させる悪循環が続いている。後半はその実例をもとに精神保健福祉制度を説明したものであり、現代の社会について考えさせられる内容である。
 ここで紹介されている事例では、互いに執着し合って呪いあっているかのようである。一概に子の因果を親子関係にだけに求めるのはなにか違和感もあり、論調や提言すべてに同意できるわけではないが、今の福祉制度等には確かに無理があるように思う。子育ての仕方・親の姿勢次第で、将来子供は親に刃物を向けたり、周囲で問題を起こしたり、マイナスとなって返ってくることもあるだろう。親だけでなく、兄弟にのしかかってくることも有り得る。子供を育てることはとても責任の重いことなのだと改めて感じさせられる一作であった。
 当事者本人より両親に問題があるケースも多いと著者が指摘していると前述したが、世界中の「親子」に当てはまる関係性の人たちは、特殊なケースを除けばそれこそ千差万別いるだろう。漏れなく自分すらその一例として挙げられる。「この本の登場人物がもし自分だったとしたら?」又は、「この本に登場した人たちと比べて自分の家庭はどうだったか?」など、様々な視点から過去や現在、又自分を取り巻く社会に至るまで自分なりの思考を巡らせることができるだろう。

ーー「自分の置かれてきた環境はどうだったのか?」

自分なりにその答えを導き出し、今一度社会に寄り添った考えを持って欲しい。(858字)
限界突破さん (8hmqoosw)2022/12/10 21:22削除
問いかけが多く書かれていて、読み手に考えさせるような文章になっているところがいいと思った。
筆者が述べていることと自分が考えたことがしっかり書かれているので、スムーズに読むことができる文章になっていると思った。
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sososoさん (8hlne9f4)2022/12/11 23:31削除
最後の問いかけにこのような書き方があったのかと驚きました。
ムロさん (8ho1qpjs)2022/12/13 19:33削除
本の内容を丁寧に説明している点は良かったが、羅列されているためスペースがなく読みにくい印象を受けた。文と文の間に飛躍も感じるため、無理に全てに触れるのではなく部分に絞るのも手だと思った。
返信
和田実礼さん (8hn9v865)2022/12/9 12:40 (No.632367)削除
本当の悪はどちらかーー福田ますみ『でっちあげ』(新潮文庫 2009)

学校内でのいじめ事件と聞いたとき、まず最初に思い浮かぶのが生徒と生徒のいじめ問題だろう。では、その次は?先生と生徒とのいじめ事件が発覚したら、人はどちらを加害者だと思うだろうか。この事件は週刊文春を火付け役として、「『死に方教えたろうか』と教え子を恫喝した史上最悪の殺人教師」と銘打って様々なニュース、記事に取り上げられた。被害者とされた男児生徒の証言によると曽祖父がアメリカ人であると聞いた担当教諭は該当生徒を「穢れた血」と罵り、差別意識をむき出しにした演説3時間もまくし立てたそうだ。そして、あろうことか鼻を掴んで振り回したりと恐ろしい体罰も行われていたとその生徒は語る。酷い虐待の内容に、福岡市教育委員会は教諭が児童に対しいじめを行っていたことを認めた。この事件は全国初の「教師によるいじめ」と認定し、教諭に対して停職6ヶ月の懲戒処分を言い渡した。しかし、虐待を受けた男児は重度のPTSDと診断された。これを理由に男児の両親は教諭と福岡市を相手取って約1300万の損害賠償を求める民事訴訟を10月8日、福岡地裁に起こした。

長々と書き連ねたが、ここまではただの序章に過ぎない。今1度タイトルを見てみよう。「でっちあげ」​──これが意味するのは、生徒とその両親の証言である。そう、これは無実の罪を着せられ、停職まで追い込まれた教師がその判決をひっくり返す話である。この話で重要になっていくのは「先入観」そして「真実」だ。生徒が教師のいじめを訴えた、重度のPTSDと診断された、そこに嘘である可能性を考慮しなかったこと。記事と1人の証言に惑わされ、誰も味方に着いてくれなかったことから、冤罪の証明の難しさを感じさせる。真実を掘り下げずに決めつけられた判決は、人々にどちらが善か悪かの先入観をもたせた。私が怖いと感じたのはそこだ。SNSに置き換えて考えて見て欲しい。似たような先入観、でっちあげで相手に悪意を押し付けていないだろうか。最終的に教師のいじめ事件の判決がひっくり返ったように、真実は揺るがない。是非、この本を読み心に刻んで欲しい。(870字)
あかべこさん (8hjyqclq)2022/12/9 14:46削除
前半から後半への勢いが感じられ、読んでいてすぐに終わってしまったブックレビューだなと感じた。前半では完全に悪として描かれていた教員が、真実では被害者だった事に唖然とした。前半と後半で読み方が急に変わって自身でも驚いた。他のレビューでは大きく3つの段落に分けられる事が多いが、2つの段落で書かれていることで、この本に書かれている衝撃がとても伝わり易い形式になっているのだろうと感じた。
カヌレさん (8hk1tkzn)2022/12/9 15:01削除
目を背けたくなるような内容だが、鮮烈なイジメの内容よりも重視すべきは、先入観の恐ろしさであるとわかりました。真相を知ることで、自身の持つ先入観を見つめ直すきっかけにしたいと思いました。
さん (8hn4n92a)2022/12/9 23:14削除
前半からの後半の裏切りが読んでいてとても興味を惹かれる表現だったと感じました。先入観というものは塗り替えることがなかなか困難なので恐ろしいものなのだと気づきました。
椎名遥さん (8hjyfbyy)2022/12/9 23:58削除
前後で書かれている内容が逆転し、まるで小説のようなレビューで面白い。始まりで投げかける問題も、ミスリードを誘うもので上手だと思う。
限界突破さん (8hmqoosw)2022/12/10 21:00削除
タイトルからこの本のテーマについて触れているところがいいと思った。
教師、教え子、いじめと聞いたら誰もが加害者は教師だと思ってしまうというミスリードを、読み手に与えるような文章構成も面白いと思った。
s
sososoさん (8hlne9f4)2022/12/11 23:33削除
同じ本について描かれているのに自分のとは違ってとても読みやすかったです。
リョウ・ヒョウヒョウ・ビンビンさん (8htw7uxs)2022/12/12 23:56削除
空白の一行を挟む事により、ここで話が切り替わるというのがわかりやすかったです。先にこの事件の冤罪について丁寧に説明されていたので、ポイントとなる「先入観」を実感することができました。また、タイトルを取り上げ、その意味を説明する事によって、衝撃的な急展開もスッと受け入れることができ、読みやすいと思いました。
ムロさん (8ho1qpjs)2022/12/13 15:55削除
後半の冒頭一文で一気に流れが変えあるところが良いと思った。自分でも理解できていなかった先入観や偏見などが表に出てきそうな内容だと思った。
返信
浅倉壮志さん (8hn35llv)2022/12/9 00:20 (No.631903)削除
娘は3度殺されたー-清水潔『桶川ストーカー殺人事件―遺言』(新潮文庫 2004年)


皆さんはストーカー規制法成立の端緒となったストーカー殺人事件を知っていますか?
一人の女子大生(猪野 詩織さん)が凶悪なストーカー犯に目を付けられ、ストーカー犯とその仲間にストーカーとは名ばかりのような集団的な嫌がらせ、ついには殺されてしまった事件がありました。しかし、この事件の本当に恐ろしい部分は被害者の残した悲痛な遺言を警察とマスコミによって歪められもみ消されそうになったことです。

女性が通り魔に殺された――それがこの事件の第一報だった。犯人は不明、分かっているのは被害者の情報だけ、マスコミは既に女子大生が通り魔に殺されたと報道し始めていた、そんな中、清水潔は本当に通り魔なのか聞き込みを始め、島田という被害者の友人にたどり着いた。島田は開口一番にこう話した。「詩織は小松と警察に殺された」と、清水さんはこの言葉をきっかけにこの事件の真相へと迫っていく。

私はこの本を読む前、この事件はただ女子大生がストーカーに殺された、そのストーカーがとてつもなく凶悪だった。そんな事件だと思っていました、しかし、読んでみると想像以上に恐ろしい犯人と集団ストーカー、ストーカー被害に対する警察の鈍さ、真相がわからないのに好きなように報道するマスコミの愚かさ、沢山の悪意がひしめいていたような事件で、こんな事件があったことを知っていなければいけないと思いました。
この本の作者清水潔さんは『殺人犯はそこにいるー隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』や『「南京事件」を調査せよ』などの有名な事件の本も著書していて、桶川ストーカー殺人事件を調査しスクープしてからはジャーナリストの鏡と呼ばれるようになりました。
『桶川ストーカー殺人事件―遺言』は、情景描写や犯人と被害者の会話などを聞き込みの情報から整理して、読者にも分かりやすくイメージがわくように書いていてノンフィクションとしてだけでなく、本としてもすごく読み込める本だと感じました。(808字)
キブサチさん (8k1uyhdq)2022/12/9 15:16削除
ブックレビュー自体のタイトルが衝撃的で目にとまりやすく興味を惹かれるので良いと思います。文章のまとまりごとに一定の間隔が空いているおかげでとても読み進めやすく目が疲れませんでした。読み手のことを考えた良い工夫だなと感じたので参考にさせていただきます!
椎名遥さん (8hjyfbyy)2022/12/10 00:16削除
タイトルの付け方が本の内容を端的に表すのが上手。また、皆が一度は聞いたことのある「ストーカー」についての法律について、初めに質問を投げかけることによって興味を惹いている点も良いと感じる。
さん (8i3wm1q9)2022/12/10 04:13削除
すごく印象的なタイトルで、読んでみたくなりました。
悲惨な事件だと思います。こういうことを追って伝えてくれるジャーナリストさんは貴重だなと思いました。
s
sososoさん (8hlne9f4)2022/12/11 23:47削除
何度かテレビで特集されていたので微かに記憶にある。この文章でけで考えさせられた。
ムロさん (8ho1qpjs)2022/12/13 15:49削除
まずタイトルが目につき興味が湧きました。ストーカー被害に遭っても事実的な被害がないと警察に動いてもらえないという話はよく聞きますが、その被害が詳しく書かれた本なのかなと思いました。作者についての説明もあり他の本にもつながるレビューだと思いました。
返信
小倉香さん (8hn4n92a)2022/12/9 10:43 (No.632224)削除
あの日を振り返ってーー彩瀬まる『暗い夜、星を数えて』(新潮社、2018年)

 「心臓が高鳴った。私はこの時確かに死を思った」

 皆さんは2011年3月11日の日を覚えているだろうか。埼玉県出身の著者は、二泊三日の東北旅行の二日目、東日本大震災に襲われた。崩壊した街を目の当たりにし、目の前から迫ってくる津波から必死に逃げた。そこから避難生活をしていく中で、感じた絶望感や周りの人間の死の実感やそんな中だからこそ実感することのできた他人の暖かさや優しさを見たまま・感じたままに綴っている。
 追ってくる津波から必死に逃げ、家を壊され、さらには原子力発電所の爆発事故による放射能に怯える毎日。政府からの情報も操作され何も信用できない絶望的状況の避難所生活の中、筆者は何度も他人の優しさを実感する。見ず知らずの人間を一緒に車で避難しようと誘ってくれる人や、どうしようもなく不安な気持ちになった時いつも明るい笑顔で話し相手になってくれる人…。もし自分だったらこんな状況下で、初めて出会った他人に優しくできたただろうか。もしくはそうでもして人と人とのつながりを感じなければどうしようもない不安と心細さに耐えきれないのだろうかと考えさせられた。
 また本書は、福島県での避難生活(被災地)の様子だけでなく、著者が埼玉県出身ということもあり、当時の被災地ではない県外の様子が描かれている。私は県外の方は大変そうだと他人事のように思っているのだろうと思っていた。なぜなら、その数年後に起きた熊本大震災をニュースで知った時私が実際にそう思ったからだ。実際に被災した方の中で私と同じ考えの方も少なくないと思う。しかし実際の様子は、食料を買い占める人、買い占めたのちに罪悪感に苛まれ避難所に支援を送る人、放射能を恐れてもっと遠い西日本に避難する人など被災地とは異なる形で不安に翻弄される人々の姿だった。果たして震災による被災者は、実際に被害に遭った現地の住民だけなのだろうか。
 11年前もの前の出来事でもう記憶の彼方へと追いやられている方も多いかもしれない。だが次また同じことが起こらないとも限らないからこそ、記憶が薄れつつある今この本を手にとってみてはいかがだろうか。(873字)
キブサチさん (8k1uyhdq)2022/12/9 15:08削除
文章の一番初めに言葉が入ると、その言葉の雰囲気が文章の内容を読み手が理解する手助けになると思うので導入としてとても良いと思います。時折「自分だったら~」という文を入れることで読み手側も一緒に想像して共感しながら読み進められるのでそこも読み手を引き付ける良い部分だなと感じました。
限界突破さん (8hmqoosw)2022/12/10 21:10削除
導入部分に本文を引用したフレーズが入ることで、読み手を惹きつける工夫がされているのがいいと思った。
自分だったらどう思うかや、考えさせられた部分を入れることで、自分も読んでみようと思える文章になっているところもいいと思った。
リョウ・ヒョウヒョウ・ビンビンさん (8htw7uxs)2022/12/12 23:58削除
冒頭に印象的な文を引用する事によって興味が惹かれました。小説の内容と、小倉さんの見解が交互に書かれている事によって、あの時の状況の生々しさと、リアリティが伝わってきました。
ムロさん (8ho1qpjs)2022/12/13 13:20削除
被災者というと現地の方のことを思い浮かべるが、この書の作者のように旅行などでたまたま来ていて震災を体験した人もいたことを知った。知らない土地で被災することの不安や恐怖は計り知れないいだろう。本の内容に触れられていて、そのことについて読んで感じたことも書かれており自分も読んでみたいと思った。
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阿蘓奈央さん (8hpetckf)2022/12/9 13:57 (No.632448)削除
幸せを与えた男—岡田芳郎『世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか』(講談社文庫 2010年)
 雄大な庄内平野、日本海と鳥海山の自然に恵まれた山形県酒田市。私の出身地である。かつて、そこには世界に誇れるものがあった。これは、多くの有名人が羨み愛した映画館グリーン・ハウスとフランス料理店ル・ポットフーをつくりあげた佐藤久一の人生を描いた作品である。
 彼の人生が大きく変わった出来事のひとつに“酒田大火”がある。今から46年前、グリーン・ハウスのボイラー室を出火元に市の中心部を含んだ1774棟が焼失したのだ。多くの死傷者が出たこの火災は、被害規模でいうと戦後4番目と言われた。この頃既に映画館の運営は久一の手を離れて久しかったが、酒田市民の間ではグリーン・ハウスと久一は深く結びついていた。家財を失い復興に向け苦難の道を歩まざるを得なかった市民にとって、久一は怨嗟の対象であり続けたのである。しかし、グリーン・ハウスは無くなっていたが、これまで以上にこだわった料理を提供することで酒田の名を全国に知らしめたのだ。私は、逆境の中立ち上がる久一の姿に心打たれた。
 私の印象に残ったのが「何かひとつ世の中の人から喜んでもらえる仕事をしたい、そして世の中のみんなが幸せになることが自分自身も幸せにする」という久一の想いと、「食は芸術であり、文化である」との固い信念を貫いたことである。グリーンハウスでは芸術性の高い文芸映画などの興行的にあまり期待できないものも積極的に選んだ。また、ル・ポットフーでは食材の原価率が70%を超え大赤字だった。経営者としては失格だが、自身の夢を叶えるために努力を惜しまない姿勢・情熱は、人々に多くの人に幸せを与えるという役割を果たしたという点で優れた人物だったのかもしれない。
 久一の生き方・考え方は賛否両論あるだろう。しかし、当時の酒田の文化レベルを上げた立役者であることは間違いない。私はこの本を読み切った時、今の酒田がある理由が分かった気がした。
 この本は、追いかけたい夢がある人や夢を売る職業に就こうとしている人に薦めたい。(820字)
カヌレさん (8hk1tkzn)2022/12/9 14:18削除
簡潔にまとめられているし、久一さんの人柄が簡単にわかる文章なのが良いと思いました。また、短く自身の感想が入っていることで、読む側の興味を高められていると思います。
キブサチさん (8k1uyhdq)2022/12/9 14:21削除
山形の偉人とも呼べる人の歴史と、山形で起こった災害の両方について知ることができて勉強になりました。久一の想いはとても素晴らしいものだと思うし、何よりもそれを貫いたことに驚いた。短い文量で佐藤久一という人物に対して興味がわくようなとてもいい文章だと思います。
もくもこさん (8hkfruvx)2022/12/9 14:51削除
800字とう一人の人生を語るには短い文章の中に久一さんの誠実で人情あふれるエピソードが書かれていて、人柄がよく伝わった。こんな人に支えられた酒田はとてもいい街なのだろう、行ってみたいと思った。
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低い城の男さん (8io52kyh)2022/12/8 13:29 (No.631040)削除
食と人々ーー辺見庸『もの食う人びと』(角川文庫、1997年)  


人類は長い歴史の中で食と一緒に歩んできた歴史がある。食の安定した供給を行うために牧畜や農耕というものを始め、食糧や水を確保するために国家が戦争をすることがあるほど食というものは我々人類にとって大切なものでありなくなるということは死活問題に直結する。人類史の中ではいわゆる「飽食」と呼ばれる状態だった時代はかなり少なく、しかも限られた地域に限定されることがほとんどだ。日本でも今までは安く、多い食品を大量に消費するということが行われてきたが、昨今のコロナ禍やロシアのウクライナ侵攻によって物価の高騰や経済不況、その上に欧州で記録的な異常気象による食糧不足が重なり食品の価格高騰が止まらない状態となっている。日本は食料自給率が他国と比べかなり低く、このままの状態が続くと毎日の食に支障が出る危険性がある状況だ。今までは食糧危機というものは日本でも叫ばれていたものだが、多くの人々からしたらあまり実感が湧かなかったのも事実だ。どちらかといえばそのような問題はどこかアフリカ辺りの遠い国の出来事で対岸の火事のような状態で見ていたと思う。この本は30年ほど前のものだがその中には腐りかけの残飯に群がる人々や1日の食にも困る人々の姿が豊かな国である日本人の視点から書いたものであり、一抹の不安はあるが日本は当事者という感じはなかった。だが今の日本は前述した通りこの時代と比べればかなり貧しい国になってきてしまっている。ここで今この本を読む意味は、これから来るかもしれない未来になってしまったこの本に出てくる国々をしっかりと見てどのようにすればこれからの時代を生き抜いていくかを考えるという意味が強いと思う。人類は歴史から学ぶことによって危機から脱してきた。これからもたくさんの課題や危機が僕らの世代は経験することになることにかもしれない。その時に、前例を知っていると知っていないとでは、立ち居振る舞いが違ってくると僕は思うし、そのような考えで過去の著書を読むことがこれからの時代に必要なことだと考えた。 (844字)
堀田将吾さん (8io52kyh)2022/12/9 14:09削除
食と人々ーー辺見庸『もの食う人びと』(角川文庫、1997年)  


人類は長い歴史の中で食と一緒に歩んできた歴史がある。食の安定した供給を行うために牧畜や農耕というものを始め、食糧や水を確保するために国家が戦争をすることがあるほど食というものは我々人類にとって大切なものでありなくなるということは死活問題に直結する。人類史の中ではいわゆる「飽食」と呼ばれる状態だった時代はかなり少なく、しかも限られた地域に限定されることがほとんどだ。日本でも今までは安く、多い食品を大量に消費するということが行われてきたが、昨今のコロナ禍やロシアのウクライナ侵攻によって物価の高騰や経済不況、その上に欧州で記録的な異常気象による食糧不足が重なり食品の価格高騰が止まらない状態となっている。日本は食料自給率が他国と比べかなり低く、このままの状態が続くと毎日の食に支障が出る危険性がある状況だ。今までは食糧危機というものは日本でも叫ばれていたものだが、多くの人々からしたらあまり実感が湧かなかったのも事実だ。どちらかといえばそのような問題はどこかアフリカ辺りの遠い国の出来事で対岸の火事のような状態で見ていたと思う。この本は30年ほど前のものだがその中には腐りかけの残飯に群がる人々や1日の食にも困る人々の姿が豊かな国である日本人の視点から書いたものであり、一抹の不安はあるが日本は当事者という感じはなかった。だが今の日本は前述した通りこの時代と比べればかなり貧しい国になってきてしまっている。ここで今この本を読む意味は、これから来るかもしれない未来になってしまったこの本に出てくる国々をしっかりと見てどのようにすればこれからの時代を生き抜いていくかを考えるという意味が強いと思う。人類は歴史から学ぶことによって危機から脱してきた。これからもたくさんの課題や危機が僕らの世代は経験することになることにかもしれない。その時に、前例を知っていると知っていないとでは、立ち居振る舞いが違ってくると僕は思うし、そのような考えで過去の著書を読むことがこれからの時代に必要なことだと考えた。 (844字)
あかべこさん (8hjyqclq)2022/12/9 14:20削除
「経験することになることにかもしれない」となってしまっている所があるが、読み直す事でこのようなミスをなくせると思うので、1度読み直してから投稿した方が良いと思った。また、「思うし、そのようなかんがえで…」という所があるが、思う。また、そのような考えで…とつなげていくともう少し文のつながりが良くなると思った。
内容はとても良いと感じた。歴史や現在の問題が最初に書かれている事で興味を引きやすくなっているのではないかと思われる。
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滝口克典さん (8ic60d24)2022/12/2 08:25 (No.624531)削除
AV女優に見る震災の影――山川徹『それでも彼女は生きていく』(双葉社、2013年)

 東日本大震災をきっかけに、AV(アダルトビデオ)の世界に足を踏み入れ、自らの裸や性行為をさらしてお金を稼ぐようになった女の子たちがいる――。
 ルポライターの著者(上山出身)は、被災地をめぐる旅の最中、そんなうわさを耳にする。「東北学」をバックボーンに、上京した若者たちや被災地の人びとのリアルを活写してきた著者がとっさに思い浮かべたのは、一九三〇年代初め、恐慌と凶作で困窮化した東北の農村で、少女たちが、家の借金のために女中奉公や紡績女工、さらには花柳界へと身売りされていったという悲しい現実だった。もし噂が本当なら、東北の悲しき歴史は、豊かになったはずの現代日本でふたたび繰り返されているということになる。
 取材を始めた著者は、震災をきっかけにAVに出演したり、性風俗で働きだしたりしていた女性たちに難なく行き当たる。うわさは本当だった。著者は、この胸がふさがれるような現実を、彼女たち自身の言葉で記録しなければ、と思い立つ。本書は、そんなふうにしてまとめられたルポルタージュだ。宮城県や岩手県、福島県出身のごく普通の女の子たち七人の、AV女優として働くようになった経緯やその胸中が淡々と語られている。
 ある者は、震災で失職した家族に負担をかけまいと自活可能な賃金に惹かれ、またある者は、震災で価値観を揺さぶられ「今しかできないこと」を求めて、AV女優となっていた。インターネットの就職情報サイトで普通に求人が出ているという。地方在住のまま撮影のときだけ上京すればよいAVの仕事は、彼女たちが、学校や職場での日常と両立できるかなり現実的な選択肢でもあるのだった。
 支援の届かぬ場所で、自らの性をさらして生きる人たち。そこに人の逞しさを見るか、それとも世の酷薄さを見るかは人それぞれだろう。だがまずは、そのような人びとが私たちと同じ社会を生きているという現実に目をこらそう。ここにあるのもまた、私たちの社会の自画像なのである。(817字)(『山形新聞』2013年4月21日 掲載)
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滝口克典さん (8ic60d24)2022/12/2 08:25 (No.624526)削除
若者に希望と力を与える――戸室健作『ドキュメント請負労働180日』(岩波書店、2011年)

 部品として「使い捨て」にされる非正社員と酷使され「燃え尽き」てしまう正社員という二極化の構図のもと、苛酷さの度合いを増しつつある若年労働。とはいうものの、その職場の実態を丁寧に観察・記述し、その意味を解読するような本格的な試みにはこれまでお目にかかれずにきた。
 日本型雇用の形が崩れ、正規/非正規の身分制が常態化した現在、そこにある職場のリアルとはどのようなものであるのか。この問いに初めて正面から取り組んだともいえる企業潜入ルポルタージュの労作が本書である。著者は、労使関係論を専門とする若き研究者(山形大学人文学部専任講師)。大学院生だった二〇〇二~〇五年に、大手電機企業のケータイ組立工場や大手自動車企業の部品組立工場で従事した計一八〇日の請負労働(偽装請負)をめぐる記録と考察からなる。
 同様の手法をとるルポルタージュの古典としては、トヨタ自動車で期間工として働いた体験を綴った鎌田慧『自動車絶望工場』(一九七三)や福島原発をはじめ複数の原子力発電所での被曝労働の実態を記した堀江邦夫『原発ジプシー』(一九七九)などが有名だが、本作はそうした系譜のゼロ年代版と位置づけることもできる。
 とはいうものの、本書には企業批判のニュアンスは乏しい。印象的なのは、どうしようもなく退屈だったり苦痛だったりする労働の環境を、他者とつながって承認や情報を調達しながら何とかサバイブしていこうとする若者たちの試行錯誤の姿である。彼(女)らは、ただ状況に流され誰かの助けを待つだけの弱者ではない。若年労働の問題を語るにあたり、私たちはつい、無力な存在として若者たちの像を描いてしまいがちだ。本書は、そうしたステレオタイプを慎重に避け、主体としての若者たちを説得的に描出する。
 そう、彼(女)らには、所与の条件下で創意工夫を凝らす知恵があり、身近なところから社会を変えていこうとする意志がある。本書がさらりと示すこの事実は、若者問題に取り組む大人たちだけでなく、当の若者たちに対しても希望と力とをきっと与えてくれるだろう。(859字) (『山形新聞』2011年7月31日 掲載)
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滝口克典さん (8ic60d24)2022/12/2 08:24 (No.624520)削除
興業の近代化 図ったヤクザ――山平重樹『実録 神戸芸能社』(双葉社、2009年)

 戦後日本芸能界の基礎をつくったとされる興行会社・神戸芸能社。昭和の歌姫・美空ひばりや日本プロレス界の父・力道山の才能を見出し、その興行を強力にバックアップしたこの会社の社長が、近代ヤクザの代名詞的存在である山口組三代目組長・田岡一雄(一九一三-一九八一)である。
 本書は、戦後芸能界の黎明期に当たるこの神戸芸能社(一九五七年発足。前身が山口組興業部)の歩みを、田岡と彼を取り巻く昭和の綺羅星たちに焦点を当て、丁寧に追いかけたルポルタージュだ。著者は、ヤクザや右翼など近代日本のアウトローを描いた著作の多い長井市出身のフリーライター。
 本書の特徴は、単なる暴力団のフロント企業としてではなく、それまで前近代の慣習に埋没していた芸能・興行の近代化や事業化に本気で取り組もうとした堅気の集団として、神戸芸能社を描き出した点にある。この理解には著者のアウトロー贔屓も多分に作用していようが、ヤクザという存在の、近代日本における地域社会との蜜月関係を想起するなら、それもありである。
 元来ヤクザは、明治後期、資本主義の急速な確立という近代国家の要請下で形成された都市下層社会、炭鉱地域社会、港湾地域社会など市民社会の周縁部で生まれた。法治の及ばぬそれらの場では、農村から流入した雑多な人びとを束ね、暴力を担保に秩序を維持する社会的権力が求められた。これがヤクザの起源だ。放浪芸が主であった近代日本の芸能者たちが、地域社会の顔役だった彼らと密接な関係を築いていたのも当然と言えば当然の話だ。
 一九六〇年代、警察行政による暴力団取締りとテレビの普及とが、そうしたヤクザと芸能界の蜜月を解体していく。神戸芸能社もまた、そうした歴史の中で幕を閉じた。そして四〇年。私たちの目の前には、空洞化した地域社会と空虚なテレビ文化とがのっぺりと広がっている。こんな時代の、こんな私たちだからこそ読むべき一冊だ。ノスタルジーではなく、現在を相対化しそこから自由になるために。(826字)(『山形新聞』2009年12月20日 掲載)
返信
浅倉壮志さん (8hn35llv)2022/10/30 17:07 (No.591014)削除
名作ミステリーを読みたいのなら  アガサ・クリスティー(堀内静子訳) 『ABC殺人事件』【早川書房 2003年】

『そして誰もいなくなった』『オリエント急行殺人事件』など、数々の名作を生み出したイギリスの名作家アガサクリスティのエルキュール・ポアロシリーズの長編11作目のABC殺人事件。もしこれから推理小説を読もうか悩んでいる人がいるならアガサクリスティの推理小説は、1度は読んでみるべきであろう、これから紹介するABC殺人事件はエルキュールポアロシリーズのオリエント急行殺人事件の知名度で隠れているが、アガサクリスティ最盛期の名作の一つである。
ロンドンに新しくアパートを構えたポアロのもとに届いた一通の手紙、「今月21日のアンドーヴァーに注意することだ。 敬具ABC」 それは探偵ポアロに向けた事件予告の挑戦状であった。そして予告通りAの頭文字のアンドーヴァーでAの頭文字を持つ老婆アリスアッシャーが殺害される、事件現場にはABC鉄道案内が残されていた。アンドーヴァーの事件を調査中のポアロのもとに第二第三と新たな挑戦状が届く、その予告通りに起こるBの頭文字の地でBの頭文字を持つ娘が殺され、Cの地でCの頭文字を持つ紳士が殺された。一体犯人の目的は何なのか、なぜポアロにわざわざ挑戦状を送ったのか、ABC殺人事件とエルキュールポアロの推理をポアロの親友ヘイスティングスと共に思考し見届けよう。
この作品はABC殺人事件の謎や犯人とポアロの対決はもちろん見どころなのだが、私が思うこの作品の見どころはABCの頭文字を持つ土地で起こる事件の関係者たちのそれぞれのストーリーだ、被害者と容疑者の関係、愛や憎しみが入り混じるそんな関係が分かりやすく描かれている。そして物語が展開される土地が制限されることで読者にも可能になる犯人捜し、事件を分かりやすくかみ砕き読者に伝えるヘイスティングスの見る世界、それを巧みに作り出すアガサクリスティの文章力である。
『ABC殺人事件』という小説は、アガサクリスティの高い発想力から生まれる難解なミステリーと読者にも読みやすく伝える文章力で構成された王道ミステリーである。(870字)
キアイ、デ、、サチオさん (8hnjjwr9)2022/11/4 15:04削除
文の冒頭によく知られている本のタイトルが書いてあると、読み始めやすくてとてもいいなと思った。ミステリーは以前から興味があったので読んでみようと思う。
カヌレさん (8hk1tkzn)2022/11/4 15:24削除
あらすじで必要な事柄が抜け落ちずに紹介されていて、作中の舞台設定や登場人物への理解が深めやすかったです。内容が良い分、改行して1マス空けることや「」が使われているともっと読みやすかったのではないかと思います。
さん (8i3wm1q9)2022/11/4 15:31削除
すごくわかりやすいあらすじで理解しやすかったです。読むにあたってのどこに注目すればよいのか、どこが魅力なのかも伝わってきたのでこれから読むときスムーズに進められそうだと思いました。
蒼穹の竜さん (8hk0l1ap)2022/11/4 15:38削除
私はミステリーが好きでまだ『ABC殺人事件』を読んだ事がなく、事件の内容が面白そうなので是非読んでみたいと思いました。文字が詰まって読みにくいと感じたので、文章の間に空間があると読みやすくなると思います。
Y
YOFFYさん (8i3w1ebh)2022/11/4 22:28削除
簡潔にあらすじを述べながら面白いポイント、ミステリーに重要な犯人探しなど本を気持ちよく読んでもらうための文章への工夫が節々に感じられていていいと思いました。
ムロさん (8ho1qpjs)2022/11/11 00:34削除
ABC殺人事件は舐めだけ聞いたことのある作品だった。ミステリーもネタバレを防ぎつつ書評することは難しいジャンルではあると思うが、簡潔に内容を伝えて、読みどころを伝えつつもネタバレはしていないところが特に良いなと感じました。
なすさん (8ixpe9va)2022/11/11 12:23削除
とてもわかりやすいあらすじ紹介だったと思う。自分は普段あまりミステリー小説などは読まないがこの紹介文を読んでアガサ・クリスティーに興味が沸いたので是非読んでみたいと思う。
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