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沼田りんさん (8ho1qpjs)2023/1/20 14:02 (No.675064)削除
「わからない」に立ち向かう――長谷川裕子『「なぜ?」から始める現代アート』(NHK出版、2011年)

「現代アートはわからない」そう感じる人は多いだろう。私もそのうちの1人である。この本はそんな現代アートの外でバリアを張ってしまっている人のための入門書である。
第1章から第7章にかけて2011年までに出された現代アートの有名どころについて網羅的に描かれており、初心者に適したラインナップになっている。
また、著者の長谷川裕子は国内外で活躍するキュレーター(学芸員)であり、そんなプロの視点から現代アートをみることで目の付け所や、思考の流れなどの鑑賞法や、時代背景、作品のもつ意味を知り、現代アートについて知ることができるこの本は興味がありながらも、まだ一歩を踏み出せていない人におすすめの本である。

 私がこの本を読み現代アートについて興味が湧いた最も大きなきっかけとなったところは、エルネスト・ネトの「ヒューマノイド」という作品について紹介している部分である。「ヒューマノイド」とは、布や糸のような繊維や、ゴム、脂肪などの柔らかい素材を使用して制作された彫刻や立体作品のことを指すソフトスカルプチュア兼ソファの作品である。すっぽりと中に入って座ったり、そのまま背負って歩いたりすることができるため、まるで自分の体の一部になった様に感じることができる。著者が言うにはこんなにもシンプルなことで、解放され流のかと思うほど、私たちは疲れていると気付かされるという。この経験から著者は「どうシエこんなにも疲れているのでしょうか?」と言う「なぜ?」を生んだ。
 そして、固い椅子、四角いビル、などと私体を取り巻く環境が形や素材について固定観念があり、知らないうちにコントロールされていることに気づき、もともと自然の中にはまっすぐな線や直角はないのに、元来の取り囲まれていた環境と異なっていることがストレスの原因になっていることに気づいている。
 この様に、一つの現代アートから生まれた自分自身の「なぜ?」について考えると現代社会と繋がり最終的に抱えている問題に気付かされる。

このように、「現代アート」という未知の存在に対して様々な「なぜ?」をぶつけ自分なりの答えを立ち止まって考えてみることで現代アートが身近に感じることがきっとできる様になるだろう。
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沼田りんさん (8ho1qpjs)2023/1/20 14:12削除
「わからない」に立ち向かう――長谷川裕子『「なぜ?」から始める現代アート』(NHK出版、2011年)

「現代アートはわからない」そう感じる人は多いだろう。私もそのうちの1人である。この本はそんな現代アートの外でバリアを張ってしまっている人のための入門書である。2011年までに出された現代アートの有名どころについて網羅的に描かれており、初心者に適したラインナップになっている。また、著者の長谷川裕子は国内外で活躍する学芸員であり、そんなプロの視点から現代アートをみることで目の付け所や、思考の流れなどの鑑賞法、時代背景、作品のもつ意味を知り、現代アートについて知ることができるこの本は興味がありながらも、まだ一歩を踏み出せていない人におすすめの本である。

 私がこの本を読み現代アートについて興味が湧くきっかけとなったところは、エルネスト・ネトの「ヒューマノイド」という作品について紹介している部分である。布や糸のような繊維や、ゴム、脂肪などの柔らかい素材を使用して制作された彫刻や立体作品のことを指すソフトスカルプチュア兼ソファの作品である。すっぽりと中に入って座ったり、そのまま背負って歩いたりすることができるため、まるで自分の体の一部になった様に感じることができる。著者が言うにはこんなにもシンプルなことで、解放され流のかと思うほど、私たちは疲れていると気付かされるという。この経験から著者は「どうシエこんなにも疲れているのでしょうか?」と言う「なぜ?」を生んだ。
 そして、固い椅子、四角いビル、などと私体を取り巻く環境が形や素材について固定観念があり、知らないうちにコントロールされていることに気づき、もともと自然の中にはまっすぐな線や直角はないのに、元来の取り囲まれていた環境と異なっていることがストレスの原因になっていることに気づいている。
 この様に、一つの現代アートから生まれた自分自身の「なぜ?」について考えると現代社会と繋がり最終的に抱えている問題に気付かされる。

このように、「現代アート」という未知の存在に対して様々な「なぜ?」をぶつけ自分なりの答えを立ち止まって考えてみることで現代アートが身近に感じることがきっとできる様になるだろう。
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カヌレさん (8hk1tkzn)2023/1/20 14:27削除
著者情報がわかりやすく示されていることや、現代アート作品の一例を挙げて紹介しているところが、良いと思います。ただ、冒頭のとおり「現代アートはわからない」と思っている人のために、現代アートとは何かを簡単に述べておくことや、誤字に気をつけるとより良いと思いました。
あかべこさん (8hjyqclq)2023/1/20 14:29削除
最初のつかみがとても上手いと感じた。共感する人が多い「現代アートはわからない」という言葉を冒頭に用い、端的な内容の説明や著者の説明による説得力などが効果的に作用しているように思われる。しかし、誤字が目立つように感じた。良い内容となっているが誤字により中盤がとても読みづらくなってしまっている。書き終わった後に読み返す癖をつけるようにした方が良いと考える。
銀燭さん (8hjytxx7)2023/1/20 14:35削除
冒頭の疑問は共感する人が多いと思い、良いつかみだと感じました。引っかかったのは、文章中の誤字や、そもそも現代アートとは何か概要がわからないままレビューが終わってしまっていることです。書き終わった後に誤字脱字スペルミスなどを一通り確認するようにするといいと思います。
蒼穹の竜さん (8hk0l1ap)2023/1/20 14:50削除
自分の読んで興味が湧くきっかけが書いてあり、そこから本の具体的な内容が挙げられているため雰囲気がわかりやすくなっていました。
 以下のことは意図的に表記していたら気にしないでください。2段落目の「著者が言うにはこんなにもシンプルなことで、解放され流のかと思うほど、」は「著者が言うにはこんなにもシンプルなことで解放されるのかと思うほど、」にした方が「で」と「解」の間には句読点入れなくて良いと思います。また、「流」は「る」なのかなと思います。加えて、「どうシエこんなにも疲れているのでしょうか?」となっている部分は「シエ」ではなく「して」ではないでしょうか。私の指摘が間違っていたらすいません。
メタキンさん (8hn35llv)2023/1/20 16:49削除
冒頭のつかみ、本のあらすじ、なぜ自分がこの本を読もうと思ったか、まとめまで分かりやすく説明していると思いました。ですが、最後まで現代アートがどういうものなのかがわからないのが残念でした。
リョウ・ヒョウヒョウ・ビンビンさん (8htw7uxs)2023/1/23 21:07削除
著者情報や、この本を読む意味が丁寧に説明されていて、説得力のある良いレビューだなと思いました。一つの例を具体的に取り上げていたため、本書の内容を簡易的に体験できたように感じます。
しかし、「また、著者の〜おすすめの本である。」の文章が長すぎるため、言いたいことが理解しにくかったです。一文は20〜40文字に抑え、一つの事柄についてまとめると読みやすくなると思います。また、誤字が多いため、最後に推敲するとより良いブックレビューになると思います。
えだまめさん (8hlpmoie)2023/1/26 20:52削除
「私がこの本を〜きっかけとなったところは」、の文章が長いと感じた。「特に興味を引いたのは〜」などと単純な文に置き換えても良いと感じた。
返信
早坂澄空さん (8i3wm1q9)2023/1/20 13:51 (No.675053)削除
What do you think “kawaii”? ――四方田犬彦『「かわいい」論』(筑摩書房、2006年)

 皆さんはかわいいという言葉をどれぐらいの頻度で発するだろうか。猫、犬、ぬいぐるみ、小さい子供、意地っ張りな女の子、丸い石、テレ顔の男の子、女の涙エトセトラ。あらゆるものに対してかわいいと発言してしまう。脳死で「あーかわいい」と言ってしまった経験、皆さんはあるだろうか。今この瞬間もかわいいという言葉は溢れている。
 この本は日本から発信された「かわいい」という言葉が世界でたしなまれている姿を間近に見た著者が、なぜ「かわいい」がこんなにも広まっているのか分析していく話だ。著者の四方田犬彦は宗教や文化などを学び、明治学院大学教授として映画史の教鞭を執っている人だ。様々なコンテンツに通ずる彼こその様々な切り口で「かわいい」についてこの本では語られている。九章に分けられており、著者が「かわいい」を出会い・認知するところから、文豪太宰治が「かわいい」をどう描いたか、E.T.は本当に「かわいい」のか、男女の「かわいい」の認識の違い、「萌え」について、海外で広まっている「かわいい」文化についてなど様々な視点から「かわいい」を深めることができる。
 第三章では実際に大学生に「かわいい」についてアンケートをとっている。アンケート内容はなにをかわいいと思うか、かわいいと言われたことはあるか、かわいいと呼ばれたいかなどが問われている。なにをかわいいと思うかの違いが面白く、おじさんになったらかわいいと呼ばれたいという男子や、自分が下に見られているような気がするからかわいいと呼ばれたくない女子など、「かわいい」に対しての多様な意見を見ることができる。
 17年前の本のため今とは少し感覚が違いおや?と感じる描写あったが、自分の考えとの違いを比較することも楽しめる本だ。様々なコンテンツのことに触れているため、文化論やコンテンツ論に興味のある人には特におすすめできる本だ。(802文字)
さん (8hn4n92a)2023/1/20 14:36削除
大学の教授で知識の幅は広いからこそ味わうことのできるさまざまな「かわいい」についてや、大学生のアンケートで自分以外の同年代の人が思う「かわいい」を知ることができるという、この本ならではの楽しみ方について紹介されていたのが良かったです。
主食かぼちゃさん (8k1s7udc)2023/1/20 14:43削除
「かわいい」って考えれば考えるほど面白いテーマなんですね。普段何気なく使っていた言葉だったので、特に考えたことはなかったです。著者紹介、内容紹介どれも良い塩梅で、自分でもこの本を読んでみたい!と思えるブックレビューでした!
蒼穹の竜さん (8hk0l1ap)2023/1/20 14:58削除
全体的にまとまった内容で読みやすかったです。タイトルが英文なのもキャッチーだと感じました。大まかな内容がわかり、人に「面白そう」「読んでみたい」と思わせるような内容でした。参考にしたい文章構成です。
メタキンさん (8hn35llv)2023/1/20 17:47削除
かわいいという言葉は、沢山の意味がありそれよりも多くのものにあてはめられる事があり特に美大という場所ではさらに深い意味が生まれてくる、そんなかわいいについて古いかわいいから現在のかわいいまでのまとめ方がすごくうまかったです。
キブサチさん (8lpglf3f)2023/1/21 05:23削除
文章の冒頭で身近な例を挙げることで親近感を感じ、内容にのめりこみやすくなりました。いくら「かわいい」という言葉が主役の本とはいえ、かわいいを連呼しすぎなのではと一瞬思いましたが、連続で何度も繰り返されることで強く印象に残り、結果的に作品が気になっていました。こういった紹介方法もあるんだと参考になったとてもいいレビューでした。
s
sososoさん (8hlne9f4)2023/1/23 09:18削除
題名から魅力的な紹介文で読んでみようと思いました。筆者が一番伝えたい章を紹介することでどんな本かを詳しく知ることができました。
そこら辺の草さん (8htak834)2023/1/26 10:16削除
日本発祥の単語であるかわいいをあえて英語にして題名に持ってくるところがとても上手いと思います。どんな人におすすめなのかも強調して記されていて、読者に寄り添った良いレビューだと感じました。
えだまめさん (8hlpmoie)2023/1/26 20:42削除
文章中の「かわいい」が多く、少しくどいような印象を受けた。まとめて述べたり、省略することでさらに読みやすい文章になると感じた。
返信
浅倉壮志さん (8hn35llv)2023/1/19 01:27 (No.673446)削除
美化された過去 ――パオロ・マッツァリーノ『「昔はよかった」病』(新潮新書、2016年)

 「まったく最近の若者は」「昔はもっと良かった」、そんな言葉を貴方は言われたことはありますか?
言われたことはなくてもそれに近い言葉は聞いたことがあるはずです。この「昔はよかった病」について、この本では火の用心などの文化の話からコーラとウーロン茶や人情の話まで多くの「昔はよかった」について著者のパオロ・マッツァリーノが主観やデータを交えながら面白おかしく紹介、解説していきます。

この本がたくさんの例えを通して言いたいことは、「昔はよかった」なんていうのは、美化された思い出に浸っているだけで今も昔もそんなに変わっていないということだ。あの時は環境が良かった、人が良かった、物がよかったなんて言いながら少し調べてみれば昔も今も変わらない人柄や環境、よく考え思い出してみてみると私にもあの頃は楽しかったな~なんて小さいころを振り返っていたような気がします。
人の記憶は美化されるもの、そんな幻想をラフな物言いで破壊してくる著者の勢いは、他の本では見たことのない面白さがありました。また、この本はただ昔はよかったなんていう人たちを否定するだけの内容ではなく、「昔はよかった」なんて言葉はどの時代にもあったということを教えてくれます。今「昔はよかった」なんて言っている人も、自分より年上の人から「昔はよかった」を押し付けられていたし、これから先では、私たちが「昔はよかった」を押し付けているかもしれない。その可能性を考えながら読んでみると、「昔はよかった」ではなく「今も昔もいいところがある」という新しい見方ができました。
この本の構成は章ごとに違う「昔はよかった」を出しては否定していく短編集のような構成をしているので、見たいときにぱっと開いて読める本でした。また、触れる内容も少し際どい部分にも触れていて見ている方がワクワクしながら読めるので是非読んでみてください。(788字)
あかべこさん (8hjyqclq)2023/1/20 15:31削除
語尾のスタイルが固定されていない点に違和感を感じた。一箇所だけ「だ。」で終わっている場所があるため修正した方が良いと考える。本から引用していてその語尾となっているのであったら鉤括弧をつける必要があると考える。内容自体は共感できる部分が多かったため勿体無いと感じた。
蒼穹の竜さん (8hk0l1ap)2023/1/20 16:10削除
本に書かれている事実と自分の解釈や感想が混在してしまっています。事実と解釈は段落で分けた方が文章にメリハリがつくと思います。もう少し、具体的な例があるとどのような本であるか伝わりやすくなると思います。
キブサチさん (8lpglf3f)2023/1/21 05:34削除
導入部分の「昔はよかった病」というオリジナルの言葉で一気に文章に引き付けられました。これまで出会ったことがある言葉でただただ説明されても読み手側は面白さや興味深さを感じないので、その本のキーワードともいえるようなわかりやすくて印象に残るオリジナルの言葉を作ってレビューするのがとても効果的なんだと思わされるような良い文章でした。
さん (8i3wm1q9)2023/1/22 01:33削除
この本が伝えたいことが割と序盤にまとめられていて、結果が簡潔なのがいいなと思いました。文章構成的にいいのかはわからないですが、初手の段落が文末口語なのが前説みたいで魅力的だなと思いました。
s
sososoさん (8hlne9f4)2023/1/23 09:08削除
自分の周りでも口癖のように言っている人がいてこの紹介文を読んでどんな背景があったのか考えるきっかけになりました。
リョウ・ヒョウヒョウ・ビンビンさん (8htw7uxs)2023/1/24 09:33削除
「この本が言いたいことは〜」や「この本は〜教えてくれます。」など、本書の主張が上手に取り上げられていて分かりやすいレビューだなと思いました。
ただ、文末の口調が統一されていないのが気になります。また、筆者の感想や考えが多く、レビューというよりも感想文に近くなっているように感じました。一つの章を例とし、具体的に解説した方が、本の内容や雰囲気が伝わり、読者がより共感できる内容になるのではないかと思いました。
そこら辺の草さん (8htak834)2023/1/26 09:54削除
簡潔な内容提示と、筆者の考えやそれを読んで自分はどんな行動をしたかが書かれていて良いと思います。後半の文で段落が変わっても最初の一マスが空いていないのが惜しかったです。
えだまめさん (8hlpmoie)2023/1/26 20:30削除
短編集のような構成になっているということだったので、その中から具体的に説明するところがあっても良いのではないかと思った。
返信
髙橋春樹さん (8hjyfbyy)2023/1/15 14:20 (No.670446)削除
既成概念の崩壊を ――矢部宏冶『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』(講談社現代新書,2017)
 
 統治行為論。多くの人が高校時代に授業で学び、聞いたことがあるだろう。統治行為論は、「『国家統治の基本に関する高度な政治性』を有する国家の行為については、法律上の争訟として裁判所による法律判断が可能であっても、高度の政治性ある事柄に関しては司法審査の対象から除外するという理論」(Wikipediaより引用)であるとされている。簡単に言うならば、自衛隊などに対して、最高裁は違憲などの判断を下すことはないと捉えても良いだろう。この統治行為論が用いられた有名な裁判例は砂川事件だ。
 こんなもの、「ただの思考停止ではないか?」とも思うだろう。実際に過去の私もそう感じていたからだ。しかし、その思考停止の裏には、戦後から日米間で決められていた「密約」が存在する。本の中で紹介されているもので特に重要なものは「日米安保条約」に関わるものだ。今まで学校や世間一般で聞いてきた常識が覆るような「密約」が存在し、それは今でも効力を持ち続けているのだという。
 本では「『それはすでに米軍の上級司令官(太平洋軍司令官)が決定したことなので、日本政府が承認するかどうかという問題ではない』などとストレートに発言しているケースもあるのです」(p.98,ℓ12-14)と書かれている。実際その後に例示されている、2012年の普天間基地へのオスプレイ配備にて当時の野田首相の「オスプレイの配備については、日本側がどうしろこうしろという話ではない」(p.99,ℓ3)という発言が国民の怒りを買った件。この発現も思考が停止しているように思えるが、「密約」があるためにそうならざるを得ないのだという。
 他にも、日本国憲法の草案はGHQによって書かれたものであり、それについての言及を差し押さえたりなど、不都合な出来事と読み取れるものを隠したりなどのいわゆる「ブラックボックス」について多く書かれた本である印象を持った。鵜呑みするも良し、「陰謀論ではないか?」と疑いかかって読むも良いだろう。少なくとも読み終えた時、あなたの思考は止まっていることはないと言える本だ。(869字)
銀燭さん (8hjytxx7)2023/1/20 15:09削除
最初に統治行為論という単語が目につき難しい印象を受けましたが、それについての説明があることで掴みやすいと思いました。しかし砂川事件とは何か書かれておらず、ある程度の事前知識が必要なのかと私は見受けられました。最後の段落では読者の期待が煽られる文章があり、興味を惹かれる文だと思います。蛇足ですが「本では」のところを「本書」にするともっと良くなるのではないでしょうか。
そこら辺の草さん (8htak834)2023/1/26 10:12削除
重要な単語がわかりやすく説明されていて、さらに引用元もしっかり明記されているのでとても良いと思う。ただ、本から文を抜粋して紹介するのは良いとして丸々一文コピペするよりも、伝えたいことだけにフォーカスを当てて文を短縮させるか、内容を要約して書く方が読者により伝わりやすいのではないかと思った。ページ数の明記も特に必要ないように感じる。
ムロさん (8ho1qpjs)2023/1/26 18:22削除
「統治行為論」についてWikipediaから意味を引用するだけでなく、自身の言葉で噛み砕いて説明されているためわかりやすかった。引用場所を示しているところも実際に読む時には探しやすく良いと思うが、全体的に難しい表現が並んでいるためこのレビューから本にはいるにはややハードルが高いように感じた。中盤に出た「思考停止」と言う言葉を言い換えて最後に入れてるところは伏線回収のようで読んでいて気持ちがよかった。
返信
小倉香さん (8hn4n92a)2023/1/20 08:26 (No.674705)削除
女の子らしい ――若桑みどり『お姫様とジェンダー アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門』(ちくま新書、2003年)

 近年よく耳にする「ジェンダー」という言葉。意味は「生物学的な性差」(オス、メス)以外の、文化的、社会的、政治的かつ心理的な性差のことをいう。意味だけ聞いてもなんとなく複雑で難しい印象を受ける。だが本書は誰しもがみたことがあるプリンセス・ストーリーを題材とし、「ジェンダー」について綴っているため気軽に手に取ることのできる一冊となっている。
 著者は、千葉大学で教授を務める美術史学者。本書の構成としては、実際に著者が女子大の「ジェンダー学」の講義で生徒とディズニーのプリンセス・ストーリーアニメを見て、議論した意見を記録したものとなっている。今回題材として取り上げられているプリンセス・ストーリーは「白雪姫」、「シンデレラ」、「眠り姫」の3つがある。
 まずそもそもあなたは「プリンセス」というものに憧れたことがあるだろうか。かわいい一人の女の子のもとにかっこいい王子様が迎えにきて二人仲良く幸せに暮らす…。憧れはなくともほとんどの人はなんの疑問もなく「女の子の憧れ」や「素敵な生き方」だと思うだろう。
 だが本書は、この「プリンセス」童話は女の子に「女の子らしさ」を意識に刷り込みそれを強制させていると捉えている。例えば白雪姫の物語の中で言えば、困難の最中、白雪姫は眠っていて王子様を「待って」おり、王子様に「助けてもらい」、幸せに「してもらう」。つまり、「女らしさ」=「他人任せ」(受け身)ということである。おしとやかで、素直で、静かなことが「女の子らしい」と物語は描いており、実際に憧れた女の子は物語に影響され「女の子らしい」生き方を選んでしまうと著者は語っている。
 この考えに同調できるかできないかは置いておいて、面白い見方だと私は思った。憧れというものは自分の人生をより広くしてくれるものだと思っていたが、無意識に憧れに自分が縛られているということも確かにあるだろう。少なくとも私はこの本を読むまでそんなことを考えもしなかった。
 ジェンダーというものはおそらくこれからも社会的な課題として残り続ける。将来社会へ出ていく時の準備としてぜひ読んでみてはいかがだろうか。
(879字)
銀燭さん (8hjytxx7)2023/1/20 14:58削除
冒頭でジェンダーに意味について触れていて入り込みやすいと思いました。有名な童話を例に説明されていたり、キーワードは括弧で強調されていたり、内容が頭に入ってきやすいです。
蒼穹の竜さん (8hk0l1ap)2023/1/20 15:41削除
本のプリンセス童話の捉え方が説明されているため、どういった考え方で話が広がっていくかがわかりやすくなっていると思いました。例として白雪姫を入れていることで、具体的な内容にも触れる事ができました。カギ括弧を使うことによって強調はされて頭に入ってきやすいですが、ありすぎるとくどく感じてしまいました。少し減らしてみると良いかと思います。
メタキンさん (8hn35llv)2023/1/20 15:42削除
冒頭で「ジェンダー」とは何か、文章の中に出てくる単語の説明を入れているのですごく分かりやすいやり方だと思いました。童話とジェンダーの相容れない部分について知ることができて良かったです。
あかべこさん (8hjyqclq)2023/1/20 15:58削除
ジェンダーを冒頭で説明していて読みやすくなっていると感じた。また、括弧でキーワードを強調していて良いと感じた。しかし、最後の「ぜひ読んでみてはいかがだろうか。」という言い回しに違和感を覚えるため改良した方が良いと思う。ぜひ読んでみてほしいやぜひこの本を手に取ってほしいなどが良いのではないかと考える。
もくもこさん (8i41afur)2023/1/21 02:05削除
最初にジェンダーの説明が入っており、読み手を置いていかない気遣いを感じました。また、初めにプリンセス•ストーリーは“三つ”あると予め書くすることで、整理しながら読めていいと思いました。
キブサチさん (8lpglf3f)2023/1/21 05:09削除
ジェンダーという難しい要素と、ディズニー作品という有名で分かりやすい要素とでうまく結びつかないような気もしたが、冒頭でジェンダーについて説明されていることですんなりと二つを関連付けて読むことができた。読み手側が理解しやすくなるような配慮がとても良かった。
さん (8i3wm1q9)2023/1/21 15:41削除
ジェンダーは難しいテーマだが、よく知るプリンセスと交えると多くの人に興味を持ってもらえていいなと思いました。最近はおとなしいプリンセスのほかにも多様なプリンセスが増えてきているので、幼少期の無意識の憧れにも多様性が見られそうですね。
s
sososoさん (8hlne9f4)2023/1/23 09:15削除
昨今話題に上がっている「ジェンダー」について深く考えさせられる紹介文でした。構成がはっきりしていて読みやすかったです。
返信
栃山野乃花さん (8hlpmoie)2023/1/20 12:27 (No.674974)削除
リーダシップって何?―ー鷲田清一『しんがりの思想 反リーダーシップ論』(角川新書、2015年)

「しんがり」、この言葉を知っているだろうか?退却戦で敵のいちばん近くにいて、味方の安全を確認してから最後に引き上げる役回りを表す言葉だ。
 大学の入学試験や就職活動の面接の場でやたらと出てくる言葉がある。それは「リーダーシップ」という言葉だ。部活動でグループワークで盛んにリーダシップを持つものが立ち上がる。だが、リーダシップを持つことは正義なのだろうか。集団を引っ張っていこうという気概に溢れた、数多のリーダーで構成された集団は上手くいくのだろうか。
 京都市立芸術大学の学長をはじめとし、幾つもの集団のリーダーを務めた筆者はリーダシップ論に対抗した反リーシップ論を展開する。最後方から集団に目を配る、しんがりの思想こそが今の日本の社会に必要だと言う。
 本書によれば、日本は右肩上がりの社会であったが、今はその風潮から脱せざるを得ないと言う。著者は東日本大震災をきっかけにこの考えを取り上げるようになった。福島第一原発の事故に伴って提起された原子力発電所の廃炉などの後始末について考えることが最も重要なのではないかと提言しているのだ。
 また、本書の中で著者は「観客」からの脱却について述べている。社会で問題が起こったとき、市民は責任を負う立場への苛立ちを募らせている。この苛立ちは観客席からのものでしかない。代議制は、問題解決を職業政治家に全てをあずけ自らは政治サービスの顧客と化してしまう。これは、市民が社会で起こっている問題について思考する機会を奪う。それは市民が問題解決に向けて行動することができなくなると言うことだ。自分達の生活に関わることであるはずなのに、誰かに任せてしまう。そのことに違和感と怖さを感じた。
 社会で求められると声高に叫ばれる「リーダーシップ」だが、書籍や動画を鵜呑みにするのではなく集団や社会の立ち回りは自分の頭で考えて広い視野で見つめることが大切だと感じた。
(787)
あかべこさん (8hjyqclq)2023/1/20 14:43削除
とても惹きつけられる文章になっていると感じた。著者の説明を無理に最初に持って来ず中盤に入れている事で読みやすさや序盤の分に惹きつけられる秘訣となっているのではないかと考える。しかし内容の説明が少し多くなっていて筆者の意見があまり入っていないように感じた。
カヌレさん (8hk1tkzn)2023/1/20 15:40削除
まとまった文章で、新書の重要な部分は押さえられていると思います。どのように、しんがりの思想が求められているのかをもう少し詳しく述べられているともっと良かったと思います。
メタキンさん (8hn35llv)2023/1/20 15:52削除
リーダーシップとは何か、現在の日本に足りないリーダー問題について、自分の考えまでわかりやすく説明されていてとても読みやすかったです。この本は自分が観客としてあるんじゃないか考えさせられる本だと思いました。
もくもこさん (8i41afur)2023/1/21 02:17削除
一見初めに文章とはあまり関係ないように見えると問いかけが逆に興味を引き立たせていると思いました。リーダーシップに関して本の内容を踏まえながらも、自分の考えを示しているのもいいと思った。
キブサチさん (8lpglf3f)2023/1/21 04:56削除
文章の冒頭に説明されていた言葉の内容が、後々の筆者が持つ考えにうまくつながっているので読んでいて理解しやすかった。こまめに段落を変えるという読む側への配慮がとても良かった、どこかの段落との間に空白部分を入れるとより読みやすくなりそうだと感じた。
さん (8i3wm1q9)2023/1/21 16:26削除
リーダーシップって何?というタイトルのあと本文ですぐしんがりという言葉について問われたのでちょっとこんがらがりましたが、全部読み終わった後理解できました。話の流れもよくて読みやすかったです。
s
sososoさん (8hlne9f4)2023/1/23 09:14削除
導入から興味をそそられる面白い書き方だなと思いました。リーダーシップについて考えさせられる紹介文でした。
返信
高梨壮汰さん (8hlne9f4)2023/1/23 09:02 (No.677923)削除
働き方ーー竹信 三恵子ー『正社員消滅』(朝日新聞出版 2017)



「正社員消滅」思わずドキリとするようタイトルである。既に派遣社員が4割というのが現実であり、派遣社員と言っても昔のパートとは違って正社員並みに働いているのだから事態が悪いと思う。そして、既に派遣社員無しでは業務は成り立たない。
そもそも正社員とは何なのか、戦後の国際社会の中で働き方の標準として正社員と言う考え方が生まれてきたらしい。つまり、経営者の勝手な判断で解雇できないという、労働者の生きる権利を守るという観点からの労働者保護である。
しかし、グローバル化が進み人材派遣が解禁され非正規社員と言われる人たちが増えてくるに従って、正社員というものが改めて意識されるようになってきたと言うことである。ちなみに私たちも非正規社員である。そこで本書にも取り上げられている問題点をいくつか挙げてみた。
・我が国の労働市場においては,正社員とパートタイム労働者との間に「職務」と「賃金」の連結を認めるための社会的基盤が成立していない
・日本の正社員はパートにはない様々な 義務を負っているとされる。残業命令・配転命令に従う義務,退職後に元の会社と競合関係にある会社に就職してはならない競業避止義務,業務命令への服従義務など
確かに産業構造の変化で働く場所、必要とされる人は変わってくるし、グローバル化による競争はとどまることを知らないように見える。労働者は一体どうしたらいいのだろうか。労働者の権利や保護はどんどん縮小し、会社オーナーの都合の良いただの労働力として存在するだけになってしまうのだろうか。
本書を読むと日本の労働問題の問題点を改めて思い知らされる。しかし、解決策はあるのだろうか。社会全体の問題であり、身近な問題でもあるがなかなか難しい。
少なくとも所得配分や税率を見直して累進課税を元に戻し、法人税を元に戻し、格差を是正していくしかないように思えるが、それだけでは根本的な解決にはならないだろう。意識を変革し、最終的には経済を脱却できない限り無理なように思える。(828)
返信
国島麻帆さん (8hjytxx7)2023/1/19 23:25 (No.674450)削除
教科書にはないロマンある世界史――――玉木俊明『人に話したくなる世界史』(文春新書・2018)

 皆さんは、高校や中学時代、「歴史」もしくは「世界史」という科目にテストで苦しまされた記憶はあるでしょうか? 国内や海外の人名や数多くある戦の年数を淡々と暗記するなか地名と混ざって覚えてしまったり、似たような固有名詞や紛らわしい表記に赤ペンを走らせていたりした記憶はあるでしょうか。私は、頭がパンクしそうになったそんな時、教材の資料集のコラムや裏話のようなコーナーに癒されていました。この本も読んでいて似た空気を感じ、教科書の記述のように固すぎず、時折呼びかけてくる雑談のような雰囲気で語られており、読みやすい文体をしています。
 この本は、アレクサンドロス大王の東方遠征やアフリカの黄金にまつわる大航海時代、信長の天下取りとイエズス会の関係など有名でよく知られている出来事から、大数学者フェルマーが築いたと本書で語る現在の保険制度の基礎についてなど、私達に身近なものまで古今東西の世界史のトピックが13章に分けて書かれています。それぞれの章は約10数ページから成り立っており、その中でも2〜3ページほどに話題が分かれてまとまっていて、ちょっとした休憩時間にも手に取れるように読みやすくなっています。
 ヴァイキングは、「荒くれ者の海賊」や「掠奪者」ではなく海を越えてイスラーム帝国とも取引を行なってきた「大商人」。熱心な布教活動だけではなく、死の商人としてのイエズス会。一般的に固定されたイメージとはまったく違う偉人たちの真実や、現代人と密接なつながりのある歴史的事件などが、教科書とは異なる切り口で語られており、歴史が自然と頭に入ってくる一冊です。
 ひとつ気にかかるのは、この本の著者である玉木俊明さんが本書で目指したのは「人に聴かせて面白い歴史」と冒頭で語られていることです。しかし、文中には基本的な国や人物についての説明はあまりなく、読む際には世界史についての基礎知識を持っていた方が楽しめると感じました。教科書類の参考書的な立ち位置で、かたわらに世界史の資料集があるとより一層理解が進むのではないかと思います。
 是非この機会に手に取ってみてください。(872字)
蒼穹の竜さん (8hk0l1ap)2023/1/20 15:28削除
1段落で読み手の記憶に投げかける形になっており、文章を見ることに抵抗感がなかったです。また、本の雰囲気を説明しており読んでみたくなりました。かたわらに世界史の資料集があると理解が進むと書いてあり、実際に読んでみるときにありがたいアドバイスです。文章もまとまっていて読みやすかったです。
カヌレさん (8hk1tkzn)2023/1/20 16:00削除
本の構成や、トピックごとのページの分かれ方などが明記されていることで、本全体のイメージが掴みやすくなっているところが良いと思いました。また、最後の読者に対する配慮もブックレビューだからこそ得られる内容だと思いました。
メタキンさん (8hn35llv)2023/1/20 16:04削除
自分の体験を踏まえながら説明していて読んでいて頭に入りやすかったです。教科書では頭に入らなかった歴史が読み手に寄り添って書いてあってすごく読みやすかったことがとても伝わる文章でした。
もくもこさん (8i41afur)2023/1/21 01:52削除
最初の一文目が「あるある!」と読んでしまうような、興味持たせるような問いかけだと思いました。本の内容も詳細に書かれていていると思います。
キブサチさん (8lpglf3f)2023/1/21 05:59削除
導入の文章に共感できる部分が多く、読み始めやすかったです。読み手を引き付けつつも、本の内容にうまくつなげて持っていく、そんな感じの手法がとても良かったです。
さん (8i3wm1q9)2023/1/21 13:56削除
どういった本なのか内容が構成内容が分かりやすかったです。歴史は難しいけれど、面白いので読んでみたいと思いました。
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太田璃音さん (8i41afur)2023/1/19 13:20 (No.673801)削除
「学ぶことの本当の意味とは___」
外山 滋比古,前田 英樹,今福 龍太,茂木 健一郎,本川 達雄,小林 康夫,鷲田 清一『なんのために「学ぶ」のか 中学生からの大学講義1』(2015年、ちくまプリマー新書)


「大事なのは知識じゃない。正解にない問いに直面したときに、考え続けるための知恵である。」
勉強というと私たちは大抵「知識を得ること」を想像するだろう。しかし、それは旧式の考え方であり、本当に必要なのは知識を覚えることではなく「考える力」だ。知識はその手助けに過ぎない。本書はタイトルのとおり「なぜ学ぶのか」をテーマに複数の著者が、学ぶ意味について論じるオムニバス形式になっている。複数の著者がいるからこそ、自分が納得のいく答えを導いてくれる人がいる。また、中学生向けの本であるため読みやすい。個人的には、茂木氏の「やる気の出し方」の項目が、非常に深く刺さり参考になった。私は自分の好きなこと以外をやるのは苦痛で、全くやる気がでず後回しにしてしまう癖がある。最後までやる気がでないまま杜撰な内容のものを出したり、〆切を過ぎることも屡々だ。その度に「何故やる気がでないんだ、人間のド屑め」と考えるがどうやる気を出すのか、どう動けばいいのか分からずに次も失敗してしまう。そんな状態から抜け出すヒントが書かれていた。この章では脳の仕組みに基づいて、学習と快感のメカニズムが解説されている。脳はドーパミンが分泌されたとき、どんな行動をとったか覚えている。その際脳のネットワークが繋ぎ変わり、ことあるごとにその快感を再現しようと自発的に繰り返すようになるという。それを逆手にとってやる気を引き出すには、目標を少し高めに見積り、失敗を繰り返しながら解決するというもの。こうすることで人は努力の仕方を覚えるという。この本は義務教育を終えて勉強が強制されない、学びの取捨選択を自由にできる大人にこそ読んでもらいたい。学びの原点、勉強についてどう向き合っていくべきか考えさせられる本書は、学びを有意義にしたいけどやる気が出ない、意味がないと思う勉強を強いられていると感じる人に読んでもらいたい一冊だ。(789字)
滝口克典さん (8ic60d24)2023/1/20 13:55削除
こちらは課題図書リスト外の文献です。レビュー対象は、課題図書リストのなかから選んで投稿してください。
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滝口克典さん (8ic60d24)2023/1/11 21:59 (No.667110)削除
ミステリーとしての出羽三山 ――岩鼻通明『出羽三山:山岳信仰の歴史を歩く』(岩波新書、2017年)

 山形県に暮らしていて出羽三山を知らない者はいないだろう。県土の中央に位置する、羽黒山・月山・湯殿山からなる山岳信仰の聖地、修験道にルーツをもつ山伏の文化、そしてミステリアスな即身仏たちが集中して鎮座する土地――。
 概ねそうしたイメージで知られるこの圏域は、しかし少し踏み込んでみると謎も多い。例えば、なぜ即身仏はこの地域に集中して存在しているのか。なぜ神道の聖地のはずなのにあちこちに仏教の寺院があるのか。そしてなぜ山形県内のみならず東日本の各地に湯殿山碑(出羽三山碑)が建立されているのか。
 これらの問いに地理学・民俗学などの知見をもとに易しく答えてくれるのが本書だ。さまざまな勢力が錯綜する複雑な三山の歴史地理を俯瞰し、全体像を掴むのに最適の入門書である。著者は山形大学農学部教授。三〇年に及ぶ出羽三山信仰研究の集大成である。
 本書によれば、もともと神仏習合の山岳信仰であった出羽三山は、二度の転機をへて現在の姿に落ち着いた。第一が近世初期、そして第二が近代初期だ。前者は徳川幕府の寺社法度のもと、羽黒山・月山が天台宗、湯殿山が真言宗を選択し、祭祀権が分岐したこと(これにより各宗派が信者獲得競争に奔走するようになり、それが江戸の旅文化の隆盛と相まって、三山総体が東日本随一の霊場へと発展していった)。そして後者が明治政府の廃仏毀釈で、修験道が廃止され、各祭祀主体が「神社」化を強制されたことにより、三山の祭祀権が「神社」に移管。現在の出羽三山神社となったのだった。
 冒頭の謎はこれですべて解読できる。即身仏は、祭祀権を神道サイドに奪われた仏教側の新コンテンツであるし、寺院と神社の錯綜は神仏習合の名残、信仰圏が広大なのは多様な布教主体の競合の結果である。さながら、良質なミステリーの謎ときをじっくり味わうかのような読後感だ。
 昨今は、NHK人気番組「ブラタモリ」のようなまちあるきが流行している。本書は、そうしたまちあるきの副読本としても最適である。春が待ち遠しくなる一冊だ。(836字)
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