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髙橋春樹さん (8hjyfbyy)2022/12/6 00:13 (No.628594)削除命の価値は?――上野正彦『死体は語る』(時事通信社、1989年)
あなたは命の価値に、特に人のものについて考えたことはあるだろうか。簡単に人の命の価値と言われてもピンと来ない人も多いだろう。人は平等であるから、命の価値なんて同じだという見方もあるだろう。だが、実際すべての命が等しく扱われる事なんて稀なことだと思う。
私はこの本を読み、特に印象に残った、考えたことはこの命の価値についてだった。『――事故で死亡した。独身で会社に勤めていたが、国鉄から賠償金として家族が受け取った金額は、確か五十七万円であったと記憶している』(p.116,ℓ.1-2)と本にはある。またこの文に続き、『家族の悲しみを目のあたりにして、生命の値段とはこんなものかと、割り切れない気持ちになったことを覚えている』(p.116,ℓ.4-5)とあり、これは単純に命の価値を現金として置いたものだ。今では多くの人が入っているであろう保険だが、それはある意味、命に値段をつけているのではないか、とも捉えられる。あくまでも、この保険制度の中の話ではあるが。保険には制約もあり加入一年未満の自殺には保険金をもらえないというものもある。『生命の代償はつまるところ金にしか換算できないのだろうか――「一人の生命は地球よりも重い」』(p.119,ℓ.9-10)といった文があり、この一年未満の自殺は命の代償としてのお金にも換算されず、遥かに軽いもののように扱われている。死に方や、その死亡する時期によって価値が決められている、つまり命の価値が変わっていると言えるのではないか。
次に紹介するのは、命の価値を現金的に見るのではなく、人権など、感情的に見るものだ。『死者の側に立って人権を擁護している医師もいるのである』(p.205,ℓ.9-10)とある。人の平等性を保つためには人権を守る必要がある。しかし、人の死後はどうだろうか。物言わぬ肉塊となった時、それは人と言えるのか、またそこに人権は存在するのか。死後にどれだけの期間、人としての人権が守られるか、それによって人の価値も変わってくるのだろうと考える。(853字)